無断欠勤を繰り返す社員|解雇する場合の注意点とは?
社員が無断欠勤を繰り返しているからといって、ただちに解雇が適法となるわけではありません。
強力な措置である解雇、特に懲戒解雇からは、労働者は手厚く保護されています。
そこで、このページでは、無断欠勤を繰り返す社員を解雇する際の注意点をご説明します。
◆普通解雇と懲戒解雇の違い
解雇とは、労働契約の一方的な解約のうち、使用者の側から通告されるものをいいます。
労働契約は民法では解約が自由とされています(民法627条1項)。
しかし、労働者の地位は一般的に使用者より弱いうえに、労働は労働者の生活の基盤となっているため、労働者を保護する必要があります。
そのため、労働契約法は解雇を適法とするために一定のハードルを課しています(労働契約法16条)。
加えて、懲戒解雇は、退職金がもらえない、解雇予告手当がもらえない、将来の就職に不利となるおそれがあり、罰としての性質も有する点で、特にハードルが設けられています(同法15条)。
そのため、懲戒解雇は通常解雇に比べ、適法となるためのハードルが高いといえます。
◆通常解雇の注意点
解雇が適法とされるためには、解雇に「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」と認められることが必要です。
そのほか、産前産後、業務上の疾病、負傷による休業時等の解雇を制限する規定もあります(労働基準法20条)。
そこで、適法な解雇といえるか判断するために以下の点を注意する必要があります。
・欠勤日数
裁判所のかつての判断の積み重ねでは、おおむね2週間を超える日数無断欠勤を行っている場合、適法とみなされる傾向にあります。
・欠勤理由
特に理由のない無断欠勤を理由に解雇をする場合は当然に、適法と認められやすいです。しかし、社員がやむを得ない理由で無断欠勤を繰り返している場合や、会社に帰責される自由による負傷・疾病による休業時の解雇は違法と判断される要素となります。
交通事故によって意識が回復していないような場合、パワハラ等の職場環境に欠勤の理由がある場合が挙げられます。
・無断欠勤の前歴や態度
無断欠勤の前歴がある場合や、注意を促したにもかかわらず、改心が認められない場合、今後も勤務態度を改めると認められない態度をとっている場合には、適法な解雇と認められやすいといえます。
・労働契約終了日の設定
労働者の解雇には、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、30日分以上の解雇予告手当(平均賃金)を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。
予告、もしくは予告手当の支払いをしないで解雇をした場合、労働契約は少なくとも30日間は存続するため、その間の未払賃金を支払う必要があります。
もっとも、解雇の理由が労働者の帰責事由にある場合には、労働基準監督署の認定を受ければ、解雇予告の手続が除外されます。
2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じないような場合は、除外認定が認められる傾向にあります。
・証拠の収集
訴訟に備え証拠を収集することは重要です。
無断欠勤の事実はタイムカードや出勤簿が証拠となるため、客観的な労務管理が必要です。
また、解雇通知書の内容証明郵便も、労働契約終了の重要な証拠となります。
◆懲戒解雇特有の注意点
懲戒解雇をするためには、懲戒事由・懲戒の内容として解雇が予定されていることが、就業規則に明記されている必要があります。
もっとも、懲戒処分をするためには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」であることが必要になります(労働契約法15条)。
そのため、およそいかなる懲戒事由であっても、就業規則に定めれば認められるわけではありません。
「2週間以上無断で欠勤を繰り返した場合」を懲戒事由として就業規則上に定めており、同要件を満たしている場合、「客観的に合理的理由」と認められやすいといえます。一方で、「3日以上無断で欠勤を繰り返した場合」と定めており、実際5日の無断欠勤があった場合、就業規則に定めはあるものの、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」とは認められず、違法とされる可能性が高いです。
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